毎日卵かけご飯

好きなものを食べて好きなことして生きる

30歳を過ぎてロリータ服を着た日

f:id:tkg365days:20181008223410j:image

少女趣味、と言えば少しは聞こえがいいのかな。

平成最後の秋、私は年甲斐もなくロリータ服を着ました。曇りがちの秋の空は、何かを語ることなく、かく静かに、この非日常的な姿を受け入れてくれた気がします。

 

原宿系と言えば、私にとってはゴスロリパンクデコラ文化で青春だった。レースに安全ピンにつま先の盛り上がったおでこ靴、総じて皆囲みアイラインで目元は黒くて、カラコンしてたらもはや神みたいな。今では原宿系と言ったらパステル、ゆめかわいい、きゃりーちゃん、りゅうぺこ…カラフルで派手で奇抜なことに変わりないけど無害そう。

中学でまんまと中二病まっしぐらの私は当然ゴスロリに興味を持ち、全身黒い服を着て、それらにレースを縫い付けたり、安全ピンつけたり、眼帯してみたり。人目を気にすることなく、同級生にどう思われるとも考えず突っ走った。化粧もろくに出来ないくせに服装だけ真似っこしてて、思い出しただけでむず痒くて恥ずかしくなる。

高校生になり、親の許可も得ずにアルバイトを決め、月3~4万円のお給料をヲタクとしての出費と日々のおやつと別に頑張って貯金した。何故かお小遣いは貰えなくなった。その分必死にやりくりした。そうして貯めて初めて買ったロリータ服はBABY, THE STARS SHINE BRIGHTの真っ赤なカットソーワンピースだった。多分二万円もしない、ブランドの中で一番安いワンピース。シャーリングのAラインで、袖が外せるようになっていた。レースアップの袖の装飾と生成のレースが可愛くて、あとフロントクロスでホルターネックにできるところも好きだった。なんて可愛いお洋服を買ってしまったんだろう…通販が届いたその日は嬉しくて何度も服を広げて眺めた。そして、このワンピースはシャーリングが伸びてしまっているし、絶対にもう着ないのに未だに捨てられないでいるの。

下妻物語【Blu-ray】

ちょうどその頃、嶽本野ばら原作の下妻物語が映画化した。桃子といちごと同じ高校生だった私のハートど真ん中ぶち込まれて、何度も何度も繰り返し見た。だって大好きなブランドのお洋服がたんまり出てきて、それを着る深田恭子が可愛くて可愛くてしょうがないのにカッコイいんだもん。桃子の直向きさに、私は私の信念で生きていいと背中を押された気がした。そして、この映画が私のロリータ好きに拍車をかけたのでした。桃子の刺繍ドレスがBABYで販売されたけど、高校生の私に10万円のお洋服は買えなかった。あれは欲しかったなぁ…。

 

時給850円程度のアルバイトではお金は貯まらなくて、試験期間も一生懸命働いて、元旦は朝4時から寒空の下の大宮アルシェに並んで限定販売の福袋を買った。Angelic Prettyも好きだったけど、やっぱりBABYが大好きだった。甘ロリも好きだったし、ゴスロリも好きだった。BLACK PEACE NOWPUTUMAYOも買った。親友は裏原系からパンクへ移行してSEX POTやALGONQUINS、SEXY DYNAMITE LONDONを買っていた。かっこよかったな。

学校サボって、午後からのラフォーレのタイムセールに乗り込んだり、制服のリボンをブランドものに買えたりした。制服にVivienne Westwoodのオーブネックレスとカーディガンを毎日身につけてJEAN PAUL GAULTIERのバッグを持っていた子は私の憧れだった。そう、未だに私はゴルチエの薔薇の型押しバッグが欲しいと思ってる。喉から手がでるほど欲しかったのにあれは買えなかった。ロッキンホースバレリーナ、Vivienneのアーマーリング、未だに憧れるよね。


f:id:tkg365days:20181008224107j:image

 

時代は移り変わり甘ロリブランドはオリジナルプリントワンピースを出し、クラシカルロリブランドも増えた。限定販売に泣いた日もあった。時には転売が酷すぎて、全身当社ブランドで固めてないと売らないから!と強気宣言されて、更にそこからランダム整理券という鬼の所行で買えなかったり。今はもうあの頃ほどメゾンが残ってない。閉店していく様を見て寂しくなったし、もはやどこが生き残ってるのか状態。着ている人も見なくなったもんね。原宿の橋もいつからか誰もいなくなった。憧れの場所だったのに。

 

そうして私もいつしか年齢を理由に袖を通さなくなって。かわいいと思って買ったのに一度も着ていない子もちらほらいる。でも、着たところで相手にも迷惑がかかる。靴も髪形もメイクもあれこれ気を使うことが多いんだ。ロリータを着るというのは全然簡単じゃなくて、あの服を纏うことで所作を整えたり、背筋伸ばして、顔を引き締める必要がある。飲み食いだって制限されてしまう。そうして、自分を自分でなくすることへの快楽がある。私はその心地良さを随分と昔から知っているの。

 

今日、天気も整うしと、久しぶりに大好きなブランドと大好きなアリスがコラボレーションしたワンピースを着た。ああ、気持ちいい。パニエの重さが腰にくる、つま先が遊ぶ、付けまつげが視界に入ってくるし、バッグも肩掛けできない。それが気持ちいい。背中のリボンが、裾のフリルが、大きな髪飾りが、いつだって私を強くさせてくれる。三十路を過ぎてあの頃みたいな艶やかさは無いし、他人から見たら滑稽かもしれない。それでも私は私の信念で生きて良いことを思い出せるお洋服を愛している。


f:id:tkg365days:20181008223104j:image